だから、かな。

 せやからオレは、今田夏日に何らかの敬意を表したいんかな。



 けん制したいわけやないねん。

 戦うならそれでもええねん。



 けどもしそうなったとき。

 あいつが苦しむから。

 傷つき、もがいて、朽ち果てるように弱っていくだろうから。

 せやから。

 もめたくないねん。




「たぶん、あなたはうちの連中からオレの事を聞いてるはずや。

 ちゃらちゃらしてるとか、女に節操がないとか。

 それは噂でも、嘘でも、誇張でもなく、真実で。

 せやから否定するつもりはありません。

 ただ。

 変わったんです。

 変わろうとしてるんです。

 それだけ。

 それだけでいいから。

 わかってください」




 頭を下げるのは男のすることと違う。

 うちのおかあちゃんはそんなことを言う人やった。




 けど。

 時には下げてもええと思う。

 だから。



 頭を下げた。

 ブロウした前髪が視界に入った。

 目の前にはコーヒーカップ。

 まだ手をつけてはいない。