「わかるでしょう?
オレは梨音じゃないけど、あいつより勘が働く。
特に男女の問題は鼻が利く。
びんびんに利きます。
つまり。
あいつがさっぱりわかってないことを、オレは理解してしまう。
たとえば」
あなたの気持ちとか。
オレが言うと今田夏日はオレから視線をはずした。
そして、最初にギャルソンが持ってきた水を少し飲んだ。
「別に、あなたに手を出すな言うてるわけと違います。
それはそれ。
正々堂々と戦ってもええと思ってます。
ただ。
あいつはオレとあなたの戦いをきっと望んではいない。
せやから。
今のあいつの気持ちを尊重してそっとしといて欲しいんですけど」
「驚いたな」
今田夏日は言う。
「お前はもっと、攻撃的で、オレをけん制するんだとばかり」
「そういう部分がないとは言いません。
梨音を自分のものにするためだったら、誰をどんなふうにつぶしても平気です。
けど、あなたは違う」
「違う?」
「あいつにとってあなたはあんまり、特別すぎる」