今田夏日はそこそこの時間でさわやかな私服に着替えてきた。

 どこぞのモールで何万とかで売ってそうな服や。

 リョウが金持ちやねんから、今田夏日も金持ちの可能性はあったか。

 オレは制服やし、そもそもうちは貧乏やから。

 それを引き合いに出されたわ弱るわ。



 なんてあほなことを考えているうちに、今田夏日はカフェの扉を開けた。

 土地勘のないオレは話し合いの場を任せたんや。

 そんでオレらは向き合って。

 明るい話題があるわけでもなし。

 あるのは。

 一人の女をめぐってのやりとり。


 
 ギャルソンが二つのコーヒーを置いていって。

 けど、二人とも手を出さずにいて。

 そろそろや、とオレは口を開く。



「何も聞かないいうことは、知っているってとってますけど、それでいいんですよね?」


 そうだな。


 今田夏日はオレを見ながらつぶやく。


「多分誰かがあなたに連絡するだろうとは思ってました」


「それで、オレにわざわざ何を?」


「オレは多分、あなたが梨音に求めてることをすべて、手に入れるから」


「手に入れる?」


「覚悟を決めてもらおうと思って」


「覚悟?」


 
 渋いつぶやきやった。