すべての練習が終わって、今田夏日はタオルを首にかけてオレにまっすぐ向かってくる。


「悪いな、着替えるまで待ってくれ」


「いつまでだっていいですよ、今日は腰をすえて話すつもりできたんで」


「わかった」


 そう言ってオレとすれ違った瞬間の横顔をオレはきっと忘れへん。

 

 奥歯をかみ締めて、じっと前をにらみつけて。



 知ってんねや。

 そんで。

 めっちゃ怒ってる。



 知らんよりは、話が早い。

 けど。

 はなから怒った男相手に話すんもちょいうっとおしかった。

 仕方ないねんけど。

 自分で決めたことやから。



 リョウと付き合うんやったら。

 今田夏日と話さなあかんって。



 自分で思ったんや。

 譲ってくれって、そんなこと言うつもりはないけど。

 渡せへんって、そんなんも言うつもりないけど。

 ただ。



 話はしてもええと思ったんや。