ゆっくりと。

 リョウはゆっくりと顔を上げる。

 黙って。

 オレの顔を見上げる。

 じっと見上げて。

 一瞬。

 泣きそうな顔をする。


「どないしたん」


「わたし」


「ん?」


「誰かを好きになったことがないから、恋愛って本当はぜんぜんわからなくて」


「そやろな」


「だから、急に恋愛できるかって聞かれても、どう返事をしたらいいのかよくわからない」


「そっか」


「でも」


「でも?」


「でもね、でも、響くんのことは…」



 なぜそこで言葉に詰まる。



 心の中でツッコンでオレはため息を漏らす。


「嫌いではない?」


「そうじゃない、そんなふうには思わない」


「じゃあ、どないやねん」


「どないやねんって」


「オレのこと好きか?」



 とりあえず直球。

 ためしに投げてみる。