「愚痴っても仕方ないか」


 うっすら涙を浮かべた愛が言う。


「別れてもいいよ」


「愛」


「ただ、条件がある」


「条件?」


「そう、一つだけ」


「なんや」


「わたしがあなたをフったの」



 驚いて声も出えへんかった。



「わかった?

 ちらっと今田さんに目をとめた悟流のことをゆるせなかったわたしが悟流をフったのよ」


「愛」


「そうみんなに言ってもいいなら、別れてあげる」



 なんでやねん。

 何でこいつはほんまに…



「どうする?」


「わかった。

 そう言うてくれや」


「うん」


「それからさっきの話やけど」


「え?」


「新しい男」


 その話。

 と、愛はあまり気乗りしないようにつぶやく。