「響くん?」


 オレはスポーツバッグを肩にかけた。

 リビングを大またで横切り始める。


「本気なの?」


「どっちが?」


「え?」


「別れるのも、くどいてるのも、どっちも本気や」



 そういうこと。

 オレは口にしながらあらためて納得する。

 納得して、自分の気持ちに自信を持つ。



 本気なんや。

 オレ。

 リョウに本気なんや。



「今日は遅くなるかもしれへんから連絡はせぇへん。

 結果はわかってることやけど、一応明日報告するわ。

 あ、あれや、お前明日は学校来れるやろ?」


「え、あ、うん、たぶん」


「それやったらええねん、ほんなら、また明日」


「響くん?」


「お邪魔さま、紅茶うまかったで」


 
 オレは玄関でさっさとスニーカーを引っ掛ける。

 後ろのほうでリョウがなんやら言うてた気もするけど、思い立ったが吉日やから。

 オレ、躊躇したりしないタイプやからな。

 迷いを見せたら負けやから。



 慣れない道を大またで歩く。

 愛の家はけっこう遠い。

 電車移動やけど仕方ない。

 電話やメールで済ますのもオレらしくない。

 せやから。



 これからお前の家行くで



 それだけメールを打った。