それは印象的な試合やった。

 前半も後半もどちらも点が入らず、延長戦でT校の勝った名勝負やった。


「あの時、グラウンドには。

 15歳のわたしとひとつしか年の違わない一年生も何人か立ってた。

 それで、それに気がついたときドキッとしたの」


「ん?」


「だって、たったひとつしか年が違わない人があんな大舞台に立ってるんだよ」


「なるほど、そういう意味か」


「そりゃ響くんは小さい頃から選抜されてたからあんまりぴんと来ないかもしれないけど、引きこもりしてる中学3年生からしてみたらあれは…

 ものすごくまぶしい場所。

 夢みたいな場所。

 すごい大舞台だよ」


 
 オレにとって国立は目標やった。



 手に入ると思ってた。



 もうすでに、手を伸ばせば届くところまでオレは近づいていた。

 でも。

 リョウは違ったんや。

 少なくとも。

 その頃のリョウにとって国立は。



 夢みたいな場所やったんや。



「帰り道、夏くんが言ったの」


「なんて?」


「オレも目指してるんだよって」



 ええタイミングでくどいたわけやな、あいつ。



「それでサッカーにすごく興味を持ったの」


「わかりやすいな」


「単純なんだ、動機はすごく」