あほなこと考えながらも、方向音痴ではないオレは今田家を見つける。

 なんやろな。

 重そうな門がある。

 その向こうに花壇みたいな広い庭が広がってて。

 玄関が遠いねん。

 お父ちゃんがなんぼほど働いても買えへん家やった。

 オレって、貧乏やったんや。



 ちょっと肩を落としてため息をつき。

 門についているインタホンを押す。

 簡単には誰も出てこないだろう。

 オレはぼんやり庭を見渡しながら返事を待った。



 しばらくして遠くで音がした。

 オレが顔を向けると、玄関の扉が少しだけ開いていた。

 扉の隙間から見えるんは、リョウ。

 オレのことをじっと見てる。


 
 オレは右手を上げる。


「カバン」


 そう言ってリョウに見えるようカバンを高く上げる。

 リョウはあっ、という顔をして扉を開いて外に出てくる。



 見た感じ、そんなに具合が悪いといった様子はなかった。

 着てるものも部屋着らしかったし。

 それって。

 半分仮病って?

 それはそれで負担増やな。