「オレが提案できることは一つ」


「提案?」


「オレが課題を出すから、お前はそれを持ってリョウの家に行け」


「は?」


 何言うてんの、このおっさん。


「何でオレがいきなりリョウの家まで行くねん。

 家も知らんのに。

 意味わからんわ」


「お前はあほか」


「うっさい、あほなのは知ってるやろ」


「ここで言うあほは本当のあほを指してる。

 いいか。

 お前はあいつを明日、カバンも持たずに手ぶらで登校させるつもりか」


「あ…」


 そうやった。

 あいつのカバン。

 オレが部室のロッカーに押し込んだんや。


「そんなかっこ悪いことさせられないだろう?

 それを理由にもできるから、お前が行け」


「行けって」


「それで、あいつに言いたいことがあるなら言って来い」


「カツリョウ」


「今日のうちにけりをつけろ。

 長引くと泥沼するのは目に見えてるからな」


「泥沼」


「お前の気持ちがどこを向くかで、この学校はゆれるんだぞ」


「ゆれるって…」


「愛は影響力を持った女だからな」


 そうやな。



 言葉もない。

 けど。



 オレにはすべきことがあるらしい。

 それも早急に。

 愛のために。

 オレのために。



 リョウのために。