「そのためにも、今悪いとこ自覚するべきやろ?
エースのオレが」
「響くん」
いつもと感じが違う。
リョウの口調が何か違う。
まるで女の子のような。
ゆったりした、話し方。
なんやろ、なんか間まである。
いつもはきびきびして、はきはきして。
そんな溜めなんていっこもないはずのリョウが。
そうか。
素やから。
だから。
「選手権」
リョウが続ける。
消え入りそうな声。
オレはなんだかぞくっとする。
「行けるかな?」
すがるような目。
オレ以外の何も見えていないという目。
あかん。
なんや、飲まれる。
「響くん」
そのさいそくに両手が出たのはとっさ。
そんで、無意識。
でも。
その小さな身体に両手を回して。
強く抱きしめたのは。
意識的。