オレはそう言って立ち上がる。

 反射的にオレを見上げたリョウの、すぐ隣に腰を下ろす。

 隣に座って小さなリョウを見下ろして。


「部活、休んでもええんやぞ?」


「え?」


「少し、休んでもええやんか。

 自分の時間。

 おまえはおまえの時間をすべてサッカー部についやしてるやろ?

 それはそれで充実した時間かもしれへんけど。

 おまえにはおまえの時間も必要やろ?

 女の子やもんな。

 やっぱ女子と一緒におる時間も必要やんか。

 恋愛したりおしゃれしたり遊んだり。

 そんなんなんもしてへんやろ?」


 返事はない。

 けど。

 悪い提案ではないと思う。


「そうやってリフレッシュせぇいう休みやろ、今。

 せかせか働いてどうすんねん」


「でも」


 小さな声。



 泣き声にも似た、小さな小さな声。

 オレは口を閉じて耳を澄ます。



 その続きをもらさず聞き取るために。