「リョウ」


 強く言う。

 するとリョウはぴくりと肩を上げる。



 オレの言葉は。

 それほど怒りを含んでいたと言うのか。



「リョウ」


 オレはもう一度名前を呼ぶ。

 それからリョウの肩に手を置いて立ち上がらせる。


「こっち座れや」


 すぐ後ろのベンチ。

 オレはリョウをそこに座らせる。

 そしてしゃがんで視線をそろえる。



 でも視線は重ならない。

 リョウはオレの視線を避けてる。

 それも完全に。



 けど。

 だからってこのまま話を終わらせたりはしない。

 オレはそんな男と違う。


「リョウ、聞けや」


 オレは言う。


「こんな仕事はおまえが一人で、ここでやることと違う。

 データ収集はおまえの仕事かも知れへんけど、これは反省やろ?

 みんなで見て、客観視して、自覚すべきことや。

 一覧表にされてもピンとなんてこうへんぞ?

 わかるやろ?」


 そうや。

 絶対にそうや。

 サッカー馬鹿言うんは、だいたいそんなタイプや。


「無駄なことをしてるとは言わん。

 けど。

 一人でこんなさみしいところですんなや」