荷物を取り、席を立つ。


あの視線には気付かないフリをして、ももが荷物をまとめているのを待ってみる。


ひしひしと感じる視線は、何だか痛くなってくるようだし、意識しているせいか自分の行動がおかしく感じる。



「あ、みんな一緒に帰るの〜?」



「お!!出たな!!バカップルは今からデイトだろデイト!!」




声のした方を見ると、並んで俺達を見る美春と俊。


こう見ると、初々しさにこっちがほのぼのとしてしまう。



「でっ…そんなおっきな声で言わないでよ!!」



「あんな目立つ告白し合っといて、そりゃねえだろ!!」




赤くなって視線を泳がせる美春に、ももがクスクスと笑う。


鈴を転がすように笑うももに、気持ちがふにゃんとしてしまう。


俺はきっと、単純でバカだ。



「そうだ、ちょうど良い。みんなで記念写真撮らねー?」



「いいねえ!!宗太は気が利くなあ!!」



「いや…たまたまデジカメ持ってきてただけだから……」



オーバーな龍雅はさておき、少なくとも気持ちが浮上する俺。


写真は別に興味はないけど、なんとなくももと撮るという事が嬉しいんだ。


やっぱり俺、単純すぎる。



クラスにはほとんど生徒は残っておらず、例の意味深な視線を送ってきていた女生徒も気付けば居なくなっていた。


ホッとすると同時に、引っ張られる腕。



何の気なしに視線を向け、ドキリとする。



俺を見上げたももが、自然上目遣いになって見つめる。



思わず吸い込まれてしそうになるその瞳に、意識なんてぶっ飛んじまうんだ。



「私、写真…苦手」



「……へ?」