「あれば俺も苦労しないさ…」



少しショボンとした担任に、クラスから笑いが漏れる。


でもそんな中、毬栗ヤローの後ろ姿はももを見ているままで、ももはそんな様子に視線を上げたり下げたりなんかしている。



…面白くねえ。



イライラと頭の中が支配される。

モヤモヤと胸が気持ち悪くなる。


でも、結局俺の一方的な感情にしかすぎない。



俺、やべえよな…。



「先生、あの…席に戻っても…」



「ん?ああ、悪い悪い。いいぞ」


遠慮がちにそう言うももに対し、担任が笑いながら返事を返す。


そんな様子にホッとしながらも、自分の無力さ加減に溜め息が漏れる。



俺は…きっと単細胞の人間なんだろうな。

相当、ガキだ。



ももが近付いてくると、再びチラチラと向けられる視線がよく分かる。


何もなかったかのように席へと戻ったももが、気付かれない程度に溜め息を吐き出した。



その溜め息に導かれるように、思わず左隣のももに視線を向けた。



柔らかそうな綺麗な髪が、日差しに当たって金色に透けて見える。


長い睫毛に囲まれた瞳が伏せられ、それが淡いピンク色に染まる頬に影を落とし、そんな横顔に釘付けになってしまう。



そんな伏せられた瞳が、ゆっくりと俺に向かって向けられた。



光をすべて集めてしまったような宝石のように輝く瞳が、俺を捉える。



「る…るぅちゃん?」



「えっ、あ…いや」



ハッと気が付いた時には、顔がカーッと熱くなるのが分かる。


まさか向けられるとは思っていなかったももの視線に、分かりやすく反応してしまう俺。



やっぱり俺は、どうしようもない程のチキンハートを抱えているらしい。