ひとまず、「よろしく〜」と軽く一礼すると、周りから拍手が起こり、それを気にとめずに自分の所定の位置へと戻る。


その間にもチラリと向けられる視線に、俺は目も合わせる事もないまま席へと着いた。



「るぅちゃんの同級生が居ない理由、そーゆう事だったんだね」



思わず溜め息を吐き出しそうになった所に、掛けられる潜めた声。


グッとそれを飲み込み、声のした方へと視線を向けた。


少し面白そうに言うももに、嫌な気なんて全くしない。


何と言うか、コイツは俺を特別な目で見る事もない。



俺は俺と言うように、きちんと俺を見ているのが分かるから。



「うん、そうだな…」



「でも、なんでわざわざ?」



再び順番に進められる自己紹介。


声を潜めながら2人で会話する事に、胸がドキドキとする。


2人にしか分からない会話。


2人だけの会話。



そんなももの言葉に、一瞬過去の記憶にトリップする。


ざわつく心にグッと蓋をして、それ以上の感情が溢れないように押さえ込む。



俺が、ここへ来た理由………ここまでして来たかった理由。



「……違う世界が見たかった」



あいつが、夢見た世界。

俺とは違う、あいつが見ていた未来を、俺はこの目で見たかった。


その夢を糧に、生きてきたあいつの夢見た世界を、俺は自分の想像すらしなかった未来と無理やりリンクさせ、その世界へと飛び込んでみようと思ったんだ。


「すごくスケールがでかいね…」



「バカだろう」



「うん。バカだね」




クスクスと笑うももに、何だか救われた気すらしてしまう。


俺は、迷っていたから。