宗太の番が回ってきた時には、思わずドキリとしながら前を見据えた。



寺岸宗太(テラキシソウタ)



何というか、目が合うだけで気持ちを読み取られているような、そんな感覚。


ふわふわしたその雰囲気に、多分油断させられるんだろう。


ふわふわって…まあ髪型なんだけども。


癖毛と言うか、猫毛と言うか。


とにかく、美容院を経営している両親が居るなんて、誰が想像しただろう。



衝撃すら感じてしまうその事実に、宗太はまんまと営業までしてのけた強者だ。


そして、何だか龍雅の保護者…兄貴のようにも思えてしまう程、しっかりしていて大人。


冷静なその感覚は、きっと誰よりも周りを見る目が肥えている。


丸いパッチリとしたその瞳は、こっちを油断させるためにあるに違いない。


男女問わず、誰にでも笑顔を向け、均等に話をする姿はこっちが勉強になる程で。



その柔軟さに、意外にも学級委員タイプかもしれないな、と密かに思う。


多分、宗太はしないだろうけど。むしろ、そんな事言った暁には、言い出した奴をまんまと学級委員にまで仕立て上げてしまいそうだから怖い。



正に、小悪魔…と言うか、悪魔の化身なのかもしれない。


そんな事言ったら何されるか分かったモンじゃねえから、大人しくしていよう。



ふと視線が絡み、思わず固まる俺。


頭の中から慌てて考えていた事を追い出し、無駄にドギマギする羽目に。


うん、宗太の前では余計な事は考えない。言わない。


大人しくしていよう。



と、密かに誓っておいた。