「初めまして。瑠衣斗の兄です」



ニッコリ笑った笑顔は、何とも爽やかで俺は目を疑った。


ギョッとする程爽やかで、先ほどまでの恐怖を感じる微笑みは、どこかに消えてしまったようだ。



「け…慶兄…あのさ」



「みんな同じクラスなのか?いつも弟がお世話になってます」



「いえいえー!!るぅにはいつも笑わせてもらってます!!」



おーい。

俺は無視かー。


龍雅の言葉に、慶兄が小さく笑う。


とりあえず、一難去ったようでこっそり溜め息を吐く。


でも、こうして慶兄とこいつらが鉢合わせてしまった事に、再び溜め息を吐きたくなる。



頼むから、これ以上厄介な事だけにはなりませんように。



「るぅちゃんとお兄さん似てるー!!でも、やっぱりるぅちゃんが断絶ガラ悪いね!!」



「俺はこんなヤンキーじゃなかったよ」




美春と慶兄の酷い言いように、思わず口を噤む。


全く味方なんていない現状に、口を挟む余地なんてない。


それどころか、きっと口を挟んだ所で、またシカトこかれてオシマイだろう。



「立ち話もなんだし…どっか飯でも行こうか?」



なにっ!?



「賛成ー!!お兄さんどこ行きますか!?」



なんと!?



俺を置き去りに勝手に進む会話に、思い切り顔をしかめる。

と言うか、かなり驚く。



「じゃ、車乗って」



慶兄の声に、元気な返事をした龍雅に倒れそうになる。



勘弁してくれ……。




慶兄の愛車は、大きな大きなワゴン車だった。