「…どうしたの?」



「いや、叩きがいがありそうだな〜…って。まあ、気にするな」



首を傾げ、不審そうにみつめるももに向かって、やたら堂々と宗太が答える。


余計に訳の分からないような顔をしたももに、思いとは裏腹に顔の筋肉が緩んでいく。



ここで踏ん張らなきゃ、いろんな意味で変に思われる。

耐えろ、耐えるんだ俺。



でも、そんな努力なんて無駄だった。


頬がむずむずして、ぐっと緩まないように踏ん張る。


でも、そうすればそうする程、気持ちは正直で素直に顔が緩む。



ちくしょー。

めちゃくちゃ嬉しいんだけど。

やべー。マジ良かった……。



頬杖ついでに、口元を隠すようにして手で覆う。


目が泳いでいるが、もう気にしないでおく事にする。



安堵感からか、大きな溜め息が自然と零れる。


なんだかもう、溜め息は癖になりつつあるような気さえしてしまう。


溜め込んだ何かを、満タンになる度に定期的に排出しているかのように。



「で、でもね?ずっと好きでいさせて…って」



「ふーん。そんなの好きにさせとけばいいだろう?」



「でも、なんか…無駄に気にしちゃう」



「ほかっとけよ〜。ももが気にする必要なんかない」




俊の言葉に対するももの答えに、胸が小さくキュッと鳴る。


そして、宗太の言葉に考えるような表情をしたももに、やっぱりまた溜め息を吐きたくなった。