打ち上げ花火を点火しようとしているおまわりさんと拓也くんの背中を見ながら、智子がそっと口を開いた。
「美樹、さっきはありがとう。ちゃんと拓也と話したおかげで、変な不安が吹っ飛んだよ」
「私は何も……」
「ううん。美樹がいてくれたから、前に進む勇気が湧いたんだよ。
祐介さんにもお礼を言わなきゃね」
笑顔の智子が、とても綺麗に見えた。
いつも一緒に居る友達なのに、昨日よりちょっと大人になったように感じる。
自分の心の傷と向き合った時、
それを乗り越えた時、
きっと人は成長して強くなるんだね。
「拓也はもちろんだけど、祐介さんも最高の彼氏だね!」
智子の言葉に、私は胸を弾ませながら頷いた。
そう、おまわりさんは最高の彼氏。
……ん? あれ?
そういえば……
「智子、いつからおまわりさんのこと名前で呼ぶようになったの?」
「え? ……ああ、なんか拓也が祐介さんて呼んでるから、自然とそうなっちゃった」
そっか。拓也くんがおまわりさんを名前で呼んでるから、自然とそうなったんだ。
名前で呼べるようになった智子が羨ましいような、変な気分……。
けど、私にとってはやっぱりおまわりさんはおまわりさん。
大好きな『おまわりさん』なんだ。