「ねぇ、花火しようよー!」
台所の陰で抱き合う私たちの耳に、明るい智子の声が聞こえてきた。
「うっ……うーん! 今行くねー!」
冷静を装った私の返答に、おまわりさんが耳元で小さく笑った。
「今、笑った?」
「ごめん。なんか、かわいくて……」
おまわりさんのせいで、膨らませた頬が赤く染まった。
おまわりさんの言葉は、ほんとに魔法をかけるように心の色を変えるね……。
私は外に行くため、心地よかったおまわりさんの胸から顔を離した。
こんなに傍にいるのに、もっと近くに感じたくなるのは私だけ……?
ふいに寂しい思いになると、おまわりさんが私の手を優しく握った。
まるで離れた体を繋ぐように……。