―――――カキィインッ!!
「っ!!」
「ファール!!」
っ…よかった……。
ボールはバックネットに。
次の直球ど真ん中も怖かったけど
勇気出して投げた。
その次のシンカーはまたまた際どくて
瀬田がスイングを要求したけど
またノースイングでボールになった。
―――――カキィインッッ!!
「ファール!!」
今ので11球だ。
瀬田さんも河野さんも
たぶんイライラしてる。
俺もだ。
篠岡さんとは違う。
球速がこんなに低いとは思ってなかった。
それでもこんなに粘る。
体力がある。
変化がある。
はっきり言って
めんどくせぇんだ。
俺だってイライラしてんだ。
早く打ちてぇんだよ。
―――――バシンッ!!
「ボール」
――――…四…球……?
「大地?」
「えっ?」
瀬田が目の前にいてビックリした。
「悪かった…;;」
「何で謝んだよ」
「だって…反省してねぇみたいじゃん」
あぁ篠岡の3塁打ね。
「いいよ。
ホームゲッツー取る気で行こう」
あそこはボールじゃなかった。
あそこは直球投げさせればよかった。
あそこは変化球を低めにしたらよかった。
後悔ばっかだよ。
ダラダラで。
でも、最後ぐらいはシャンとしろ。
大地を勝たすんだろ?
大地に勝利を味わすんだろ?
新谷に、勝つんだろ?
勝ちてぇだろ?
なら、
前見ろ!!
「1番 ファースト 田中さん」
田中を抑えろ。
気を抜くな
踏張れ
自信持て
立ち向かえ
歯向かえ
前を見ろ
上を見ろッ
勝て!!
勝つ!!
すぅっと息を吸った。