その場を取り繕う様に原は、俺をカンニングの疑いの追及があやふやな感じになったまま、出て行ってしまった。
原が進路指導室を出て行く背中を呆然と眺めていた俺は、ハッと我に返って妻ちゃんを見た。
さっきまでの怖いオーラは見当たらず、いつもの笑顔だった。俺が殴った頬は若干赤く腫れていたけど…。
「嶋田、いいパンチしてるな~。ボクシングでもしてるのか?」
んな訳ねぇだろ…。いくら我を忘れてたからって、教師に手ェ上げたら最後だっつーの。
ため息を一つ吐いた俺は、妻ちゃんに頭を下げた。
「妻ちゃん、ごめんッ!!」
頭を思いっきり下げて、俺は妻ちゃんに謝った。殴った事によって頭に上ってた血を下げるなんて、すっげぇ情けない。
反省、反省…。
「どんな理由であれ、人を殴って解決する事はないんだ。気を付けろよ?」
頭を下げたままの俺の頭をポンポンと軽く叩いた。
たいした事ない。って、言ってるみたいだけど…俺は罪悪感が体中をグルグル周る。
そして、妻ちゃんは俺を背中を押して、進路指導室を一緒に出た。そこにいた人物に眉を潜めてしまったけど…。
「…赤坂」
「…また、馬鹿な事したね…」