違う、赤坂の声が掠れてるんじゃない。声が震えてるんだ。
え、これって、泣く寸前? 俺が泣かしたって事になんのかよ?
うろたえる俺を見つめていた赤坂は、フイッと視線を逸らした。
「…君は、恋愛した事ないの?」
「……そりゃーもちろん」
「付き合ってって言われて付き合うようじゃ、本当の恋愛とは言えないよ」
………………確かに…。付き合ってと言われて付き合ったさ。エッチしたいって言われたらエッチもしたさ。
それだって、お付き合いの一つだろ? こいつは何を拘ってるんだ?
「赤坂は少女漫画の読みすぎじゃねえの? いつか白馬に乗った王子様を夢見る夢子ちゃん? だとしたら、現実はそんなに甘くないよ」
「そんなモノ夢見るのは幼稚園でやめた。…現実は甘くないって事ぐらい、嫌ってほど知ってる。私が言いたいのは、付き合うのはゲーム感覚ってのがおかしいって言ってるの」
…それこそ夢に夢見る夢子ちゃんだろ? 付き合うのに好きだって感情はあまりないから、とりあえず試しにって事で付き合った方が楽なんだよ。
少女漫画はほとんど見た事がないから想像にすぎないけど…。男だって、スーパーマンじゃないんだから、ピンチの時に颯爽と現れて助けるなんてありえない。
「赤坂の頭硬すぎだよ。モノごと簡単に考えた方がいいって」
「君が軽く考えすぎ。…君は、人を好きになった事がないの?」