笑っているのに、その目は冷たいモノを見るようにも見える。
「そ、そうだったな…」
赤坂に言われた妻ちゃんが慌てて自分の腕時計を見て、時間を確認して教室を出て行った。…最後に、一度だけこっちを見て姿が消えた。
残されたのは、さっきとは明らかに雰囲気の違う赤坂と微妙に取り残された感の俺。
「…………何?」
「……い、いや…」
気まずい雰囲気が俺たちの間に漂う。
さっきまで、付き合ってなんかないってオーラを纏っていたのによ。何だよ、この変化は…?
「…一応、付き合ってるんでしょ? 私たち」
ふぅ。って、溜め息吐きながら、嫌そうな顔で言うなよ!
「む、無理して言わなくったっていいんじゃねぇの…?」
「………………」
切れ長の目が大きく見開いて、俺を見る。…何だよ。何か変な事言ったか?
「………変なの…」
そう一言言うと、俺を見ながら困ったような…呆れたように笑った。
……変なヤツ。俺はコイツが何を考えてるのか、分からないけど…付き合うってのを渋っているのだけが何となく分かっていた。
何で、コイツは俺と付き合っていいって言い出したんだろう…?