倉庫から船のあるこのビルまでは、歩いて10分程度の距離である。つまり、同じドーム内に建物はあるのだった。

その道すがらでトヲルは、徐々に期待感を高めていった。

船長が緊急に自分を呼んでいるということは、もしかしたら両親の消息が掴めたのかもしれない、と考えたからだ。

歩くスピードが、自然と速くなっていた。

「ト・ヲ・ル、お帰りなさい」

船の入口付近に到着した途端、背後から白い両腕が前に回り込んできて、耳元で囁く声がする。

全身を包み込むような甘い香りと、背中に温かい体温を感じ、吐息が耳にかかった。

「うわっ!?」

ビックリしたトヲルは、思わず前に飛び退った。

「もう!いつもそんなに驚かなくたっていいじゃないの、失礼ね。私の愛情表現なのに」

見ると相変わらず白衣を着て、いつものように完璧なメイクをしているヴェイトが、腰に手を当て立っていた。

「だっ、だ、だって、急に後ろから来るから」

まだバクバクいっている心臓を必死で押さえつけながら、それだけを言うのが精一杯である。