そこで漸くトヲルは、コウヅキの言いたいことが解ったのだった。

しかもそういう釘を刺すためだけに、自らトヲルに船長からの伝言を、伝えにきたのだろうか。

「トヲル、どうしたの?もしかして、お兄ちゃんに何か言われた?」

項垂れているトヲルに、ミレイユは心配そうに声を掛けた。

「あ!ううん…いや、大丈夫だよ」

今の会話は絶対言えないな、と思いながら、トヲルはミレイユに明るく振る舞った。

だがミレイユは、ますます心配そうな顔をする。

「ホント?もし、お兄ちゃんに何かイヤなこと言われたら、あたしに言ってね。
あたしがお兄ちゃんに、ガツンと言ってやるんだからっ」

ミレイユは無邪気な笑顔でそう言うと、ブンと腕を一振りした。

(ううう。このコ、ホントいい子だなぁ)

トヲルは、胸が熱くなるのを感じた。