「でもその年頃から働いてるなんて、偉いなぁ。それに比べて僕なんかダメだな、ぜんぜん…」

「そんなことないよぉ。あたしなんて、学校行ってないんだもん。トヲルのほうが、頭だっていいし」

「でもミレイユは、合間にヴェイトに勉強を教えて貰ってるだろ?」

トヲルは、白衣を着た『白眼の民』の女性…否、男性の顔を思い浮かべた。

「やっぱ、すごいよ。僕だったら働きながら勉強なんて、ミレイユの歳では絶対無理だったよ」

そう言ったトヲルの腕輪から、突然発信音が鳴った。

反射的に腕輪のモニターを開き、見てみると、

「あれ?コウヅキからだ」

「お兄ちゃん?」

ミレイユに、ではなく、トヲルへのコールである。

コウヅキからトヲルに通信が入ることは、滅多にない。首を傾げながらも、モニターを開いた。

『船長が呼んでるぜ。直ぐ来い』

開口一番、相変わらずの不機嫌そうな顔で、コウヅキは簡潔に言った。