「さて」

コウヅキは立ち上がった。

「用も済んだし、そろそろ俺達は帰るぜ」

そう言うと、スタスタと廊下の方に歩いていった。トヲルも慌てて付いていく。

「まあ!コウヅキちゃん、もうお帰りになるの?」

後ろから声がしたので振り返ると、女性がケーキを2つ乗せたトレーを持って立っていた。

ドレスの上から、同じピンク色のフリルの付いたエプロンを着ている。

足下を見ると、3人の子供達も同じようなエプロンを付け、それぞれティーポットやカップなどを持っていた。

「お茶も、折角ご用意致しましたのに」

困ったわ、という表情で首を傾げる。そんな女性に対してコウヅキは、またあの爽やかな笑顔で、

「申し訳ありません、マダム。急用が入ってしまったものですから、急いで戻らねばならないのです」

深々とお辞儀をした。

(この変わりようは一体…?)

コウヅキは先程、この女性とは仕事絡みで…と言っていた。

だがこの態度の変化、一体どういう仕事だったのだろうか。

トヲルには、全く想像できなかった。