沈黙が流れる。

辺りを緊張感が漂っているような気が、トヲルにはしていた。

「俺が誰かに指示されて、盗んだとでも言いたいのか?」

「可能性、だけどな」

ニヤッと、口の端を上げてコウヅキが笑った。

「ハッ。あんた、本当にゴードンの犬になっちまったんだな。
だがよ、俺はそういうことには興味ねぇんだ。あんただって知ってるだろ?
俺が興味のないモンには、頼まれたって手を出さないってことくらいはさ」

フィートは一蹴した。

「それにアレは、他の何体かの置物と一緒に偶然持ってきた物で、あれを特別に選んで持ってきたわけじゃねぇよ」

フィートの言葉に、コウヅキは口元を緩める。

「ふっ。良かったなお前、相手が俺で。俺だからその話を信じるが、他人だったらどうなっていたか、分からないぜ。もしかすると中を見たと思われて、口封じのために即、抹殺されてたかもしれねぇしな」

「えっ!?ゴードングループって、そんな会社だったの!?」

代わりに声を上げたのは、トヲルである。

「…阿呆か。俺の冗談、真に受けてんじゃねぇよ」

コウヅキは、半眼でトヲルを睨んだ。

トヲルは自分自身に、何となく恥ずかしくなって、思わず目を逸らす。

(でも、この人のことをそんなに簡単に、信じちゃっていいのかな?…泥棒なのに)

トヲルは納得がいかなかったのだが、あっさり信じたと言うことは、コウヅキにとってこの男は、信用のできる人物だということなのだろうか。