コウヅキは一瞬キョトンとした表情をしたが、瞬間、爆笑した。

「あ、アホか…オメー…」

ソファーの上で腹を抱えながら、笑い転げている。

その様子にトヲルは、少しむくれて言った。

「そんなに笑わなくたって、いいじゃないか。僕は真剣なんだ」

いつもより若干強めの口調に、コウヅキはピタッと笑うのを止めると、

「あんた、自分が何言ってんのか、分かってんのか?」

額にかかった前髪を振り払うかのように掻き上げながら、深く息を吐いた。

「で、もし仮にあんたが子供を連れて逃げたとしても、その後そいつらをどうするつもりなんだ?あんたが育てる気か?」

「そ、それは…」

「できねぇだろ。しかもあの子供達が、ここからいなくなっても、また別の子供が来るだけだぜ。代わりなら組織の収容所に、いくらでもいるからな。
つまり他の子供が、新たに犠牲になるだけなんだよ。
なのにお前、連れて逃げるだなんて、よく簡単に言えるな」

トヲルには、反論できなかった。