パニックに陥ったトヲルは、とうとう玄関のドアを叩きだした。

「すいませーんっ。あのっ、お金払ってもらわないと困るんですけどぉ!」

ドアを叩いて大声を出した。コウヅキをちらっと見ると、無言で大きく頷いていた。「そのまま行け!」ということなのだろう。

(こうなったらもう、どうにでもなれ、だ!)

かなり自棄である。更に大きな音でドアを叩き続け、叫ぶ。

「借金、返して欲しいんですけど〜!」

ふと視線に気が付いて、周りを見渡してみると、2、3人の主婦らしきヒト達が、遠巻きにこちらを見ながら、何やらヒソヒソと話していた。

隣近所の住人なのだろうか、この音を聞いて見に来たのかもしれない。

トヲルが更にドアを叩こうと、拳を振り上げた瞬間、突然勢いよくドアが開き、

「るせぇぞ子供(ガキ)!イタズラなら余所でやれっ!!」

中から出てきたのは、先程の女性ではなく、男性だった。