トヲルは益々気が滅入った。チャイムに手を伸ばすよりも先に、溜息が出た。

「でも、やる…しかないんだよね」

自分に暗示をかけるように呟きながら、恐る恐るチャイムを押す。

2度、3度押してみるが、誰もインターホンに出る気配がなかった。

留守なのだろうか。トヲルは内心ホッとしていた。

だがそれも束の間。

『…はい。どなた?』

女性の声である。

「あっ、あ…え、えーっとぉ…」

留守だろうと思い、油断していたトヲルは不意を突かれて、かなり焦っていた。

そして。

「借金、返して貰いに来ましたっ!」

ぶちっ。

瞬間、あからさまにインターホンの回線が切れた音がする。

「うわっ、ど、どうしよう」

(そうだっ!このまま帰ろう。留守だったって言えば大丈夫だよ、きっと。うん)

慌ててそう思い付き、踵を返して廊下に目を向けると、いつの間にかコウヅキが、少し離れた場所で腕を組んで、仁王立ちで立っているのが見えた。