コウヅキは、気持ち悪いくらいの満面の笑みを浮かべながら、トヲルの肩をバンバンと強く叩いた。

(あれも手伝ったことになる、のか?)

何か釈然としないものを感じはしたが。

でも。

(そうなんだよな。父さんと母さんがこんなことしなければ、コウヅキにも、その相棒ってヒトにも、迷惑をかけることなかったんだよね)

トヲルは、ひとつ息を吐いた。

「わかった。何とかやってみる」

「よっしゃ。家は802号室だから。じゃ、よろしく頼むぜ」

その軽い声に送り出されながら、トヲルは背中を丸めてゆっくりと、そのマンションに向かって歩き始めた。

その背中に向かって、コウヅキがほくそ笑んだことに、トヲルは当然気付かなかったのである。