彼女が珍しく俺に向かって笑顔を見せる。

大輪の薔薇が咲き誇るように美しい、彼女がよく仕事中にしてみせる笑顔。

楽しんでいるとか喜んでいるという心の動きは、この笑顔からは感じられない。

彼女に「どう?」と質問されたが、何について訊かれたのかわからなかった為、

「風邪をひきそうだ。必要なら上着を貸そう」

こう、気になっている事を正直に意見した。

このまま、この部屋から出れば、すぐに身体が冷え切ってしまうだろう。

すると、彼女は笑顔をかき消し、表情を怒りに変えると、

「こんっの、欠陥品っ!!」

ブーツのかかとで俺の脚を蹴ってきた。


どうやら、俺の答えは間違っていたらしい。

次は、気をつけよう。