「彼女と出会ったのは、この学校に新任として来た最初の日でした。担任として受け持ったクラスに彼女はいました。」


シーンとなった。


「初めて彼女を見たとき、なぜか引きつけられました。ただこのときは、この彼女に対する思いは、僕の心の中だけに閉じ込めておくつもりでした。生徒と教師なんて、ありえないと思っていましたから。」


龍矢・・・


「それが、何かの縁か。彼女が僕の前に現れました。婚約者とでも言いましょうか。僕たちは知らなかったのですが、お互いの母親が僕たちの結婚の約束をしていたようです。」


うん。


私たちは知らなかった。


「彼女が僕の前に現れたのは、彼女の母親が亡くなったからです。独りになる彼女を心配して、彼女の母親が僕の母親に手紙を送っていたのです。あの約束を覚えていますか？私が死んだら、この子は独りになります。もし約束を覚えていたら、この子をよろしくお願いします。」


お母さん・・・


「僕の母親はもちろん、覚えていました。これが、僕たちが結婚した理由です。正直このときはお互いの気持ちが通っていたか、と言われると、はっきりは答えられません。」


そう。


私はこのとき、高校出たら離婚してやるって思ってた。