沙羅の気持ちは確実に聖夜に傾いていた。



「沙羅…」



呼ばないで。



そんな優しい声で呼ばないで…。



分かったから…。



もういいから…。



「聖夜…っ!」



有紗が愛おしそうに聖夜の名を呼ぶ。



次の瞬間、有紗は聖夜のネクタイを引っ張ったかと思えば、唇を重ねた。



うずくまっていた沙羅は何かを感じとったのか顔をおそるおそる上げる。



「…や」



涙は溢れるばかり。



嫌だ…っ!嫌だ…っ!



聖夜…



初めて恋のつらさを知った。



初めてこんなにも好きになれた。



「聖夜…」



沙羅はその場から逃げだすしかなかった。