「何してるんだ!どけ!!」



 喧嘩なんてしたことがないから、とにかく琥珀から、男達を引き離そうと思った。腕や肩を掴んで距離を置かせたら、彼女を庇いながら立つ。その時、和田がオレを見つめる顔は蒼白だった。



「安海君……何で……」

「それはこっちの台詞。優等生のキミがこんなことをするなんてな。」

「違うの!これは……」

「多数の男子に女子を襲わせようとして、まさか言い逃れができるなんて思ってないよな?どういうことだ?」



 マズいことになったと思ったのか、男達は逃げていく。和田は唇を震わせながら、怯えたようにオレを見ている。そして、叫ぶように言葉をぶつけてきた。



「あ、安海君が悪いんだから!そんな子にばっかり構って!絶対、私の方がお似合いなのに!!」



 ボロボロと涙をこぼす和田は、確かにオレと釣り合いが取れているのかもしれない。一般的に言って美人な部類に入るだろうし、身長差のバランスも丁度良いだろう。

 過度な自己主張はしないし、知識も教養もある。街を歩けばきっと、振り返るヤツは少なくないのだろうけど。



「……悪いんだけど。オレは、自分に似合う・似合わないで恋人を選ぶつもりはない。洋服やアクセサリーと一緒にしないでくれ。」



 少し前までのオレならきっと、名の知れた大学に入って、有名企業に就職して、そこそこ美人な奥さんがもらえたら、それで良いと思っていた。周りの目が、自分のステータスが重要だと考えていたからだ。

 でも……琥珀に会って、変わったような気がする。人目なんて気にしないコイツの性格が清々しくて、馬鹿な所も愛嬌なんだと思えて。見た目だけじゃ相手のことは分からないんだなと、18年間の考えを改めさせられた。