苦手だった筈が、いつの間にか、側に居ることが心地良くなっていた。在と居る時とはまた違った安らぎを、この女には感じているのかもしれなかった。
気を使わなくて良いというか、余計なことを考えなくても良いというか。とにかく楽で、自然体で居られる。そういう友人が居るのは、とても貴重なんだろうな。
もうすぐ休み時間が終わるというのに、琥珀が戻ってこない。教師なら、生徒のことを考えて早めに教室へ帰すものじゃないのか。そう思っていたら、琥珀と同じクラスの女子生徒がやってきて、オレ達に走り寄ってきた。
「安海君!山本君!」
「どうしたの?高橋さん。」
「琥珀が変な人達に連れて行かれちゃったの!ウチの制服着てなかったし、絶対ヤバいよ!!」
助けて、と女が言う。在が「分かった」とか何とか返している間に、オレは駆け出していた。何処に居るかも分からないのに、とにかく行かなければと、そう思った。
「在!お前はきちんと授業に出ろ!これ以上馬鹿になったら困る!!」
「ひでーな!でも、任せた!琥珀ちゃんは頼んだよ!!」
言われなくても分かってるよ。“廊下は走るな”を常に守ってきたオレが、教師の怒鳴り声を背中に受けることになるなんて。本当に、あの女はぶっ飛んでる。オレの常識を、簡単に覆してしまったのだから。
メジャーな場所は探したし、空き教室もくまなく見た。これだけ探して居ないなら、校舎内ではないのかもしれない。
「……残るは、外か……」
グラウンドは人目に付きすぎるからパスして、中庭や裏庭にも行ってみる。ここにも居ないということは……まさか、体育館裏か。おいおい、いつの時代の不良ドラマだよ。そう思って行ってみたら、本当に複数の人影があった。
ウチの制服を着た派手な金髪の女を取り囲んでいるのは、似たような髪をしてはいるが、私服の男達だ。その中に、きちんと制服を着こなした緩やかな黒髪の女を見つけて、オレは一瞬目を疑った。眼鏡を外して曇りを取ろうとしたが、汚れなど見当たらない。視力が悪くなった訳でもなく、目の前で起きていることが真実だった。
「和田……嘘だろ……」
高らかに笑いながら、男達に何かを言いつけている和田。腕組みをしているその顔は、オレが知っている和田ではなかった。清楚って、何だ。所詮幻想か。激しい眩暈が、体を襲った。
「タカ!早くヤっちゃってよ!」
「小花ちゃんがそう言うなら……でも、マジでいいのか?」
「確かにスタイルいいけどよー……一応高校生のガキだろ?」
「私が良いって言ったら良いのよ!ほら、マツもヨウ君も!!」
どんな理屈だ。訳が分からない。呆れかけていたが、一人の男が琥珀のセーラー服をずらした所で我に返る。制服の紺色に映える真っ白な肩紐が覗いたら、頭がカッと熱くなった。
気を使わなくて良いというか、余計なことを考えなくても良いというか。とにかく楽で、自然体で居られる。そういう友人が居るのは、とても貴重なんだろうな。
もうすぐ休み時間が終わるというのに、琥珀が戻ってこない。教師なら、生徒のことを考えて早めに教室へ帰すものじゃないのか。そう思っていたら、琥珀と同じクラスの女子生徒がやってきて、オレ達に走り寄ってきた。
「安海君!山本君!」
「どうしたの?高橋さん。」
「琥珀が変な人達に連れて行かれちゃったの!ウチの制服着てなかったし、絶対ヤバいよ!!」
助けて、と女が言う。在が「分かった」とか何とか返している間に、オレは駆け出していた。何処に居るかも分からないのに、とにかく行かなければと、そう思った。
「在!お前はきちんと授業に出ろ!これ以上馬鹿になったら困る!!」
「ひでーな!でも、任せた!琥珀ちゃんは頼んだよ!!」
言われなくても分かってるよ。“廊下は走るな”を常に守ってきたオレが、教師の怒鳴り声を背中に受けることになるなんて。本当に、あの女はぶっ飛んでる。オレの常識を、簡単に覆してしまったのだから。
メジャーな場所は探したし、空き教室もくまなく見た。これだけ探して居ないなら、校舎内ではないのかもしれない。
「……残るは、外か……」
グラウンドは人目に付きすぎるからパスして、中庭や裏庭にも行ってみる。ここにも居ないということは……まさか、体育館裏か。おいおい、いつの時代の不良ドラマだよ。そう思って行ってみたら、本当に複数の人影があった。
ウチの制服を着た派手な金髪の女を取り囲んでいるのは、似たような髪をしてはいるが、私服の男達だ。その中に、きちんと制服を着こなした緩やかな黒髪の女を見つけて、オレは一瞬目を疑った。眼鏡を外して曇りを取ろうとしたが、汚れなど見当たらない。視力が悪くなった訳でもなく、目の前で起きていることが真実だった。
「和田……嘘だろ……」
高らかに笑いながら、男達に何かを言いつけている和田。腕組みをしているその顔は、オレが知っている和田ではなかった。清楚って、何だ。所詮幻想か。激しい眩暈が、体を襲った。
「タカ!早くヤっちゃってよ!」
「小花ちゃんがそう言うなら……でも、マジでいいのか?」
「確かにスタイルいいけどよー……一応高校生のガキだろ?」
「私が良いって言ったら良いのよ!ほら、マツもヨウ君も!!」
どんな理屈だ。訳が分からない。呆れかけていたが、一人の男が琥珀のセーラー服をずらした所で我に返る。制服の紺色に映える真っ白な肩紐が覗いたら、頭がカッと熱くなった。