あの“おれのものにするかも宣言”から、渋沢の行動が余計目に付くようになった。生徒だけでなく、先生達の間でも、二人はそういう関係だという認識らしい。真奈瀬が焦ったように否定するのも、どうやら照れ隠しだと思っているみたいだ。まぁ、隣に居る男が、満足そうに笑ってるからだろうけど。

 あいつを羨ましがっても、きっと意味はない。動くあいつと、立ち尽くしたままの俺。そういうこと、なんだと思う。だから、ただ俺も、思うままにやってみれば良いだけの話、なんだけど。



『美隼。頼むから、スキャンダルだけは起こしてくれるなよ。タレントは、イメージが大事なんだからな。』



 いつだったか、社長に言われたこと。どいつもこいつも口を揃えて、印象第一だの何だの言うから、めんどくさくてつい、“はいはい”なんて返事してたっけ。



「……ほんと、めんどくさいな。人の恋愛にまで口出しすんなよ。」



 問題を起こさなきゃ良いんだろ、要は。だって、黙って見てるだけなんて、もう嫌なんだ。

 廊下でたそがれていたら、ふと視線の先に、見慣れた二人組。セットで認識するなんて、俺の意気地のなさを痛感させられるだけだ。



「……辛いんなら今すぐ行けよ、バカ……」



 呟くだけになってしまったのは。他の男に愛らしい笑顔を向けるあの子を見て、足がすくんでしまったから、なのかもしれない。