“石川真奈瀬が陸上部員に告白された”という噂を、一週間振りの仕事明けの朝に聞いた。この時の俺の気持ちは、想像してもらわなくても分かってもらえると思うけど、最悪だった。
好きな奴は居ない、とは言っていた。でも、あいつは、自分を好きになってくれる人の気持ちを無下にはできない性格だ。ということは、つまり、OKする可能性も否定はできないのだ。
「石川さんに告白したのって、渋沢君らしいよ。」
「えっ、陸上部の渋沢龍二!?アレじゃん、確かどっかの大学からスカウト来てるんでしょ?ヤバいね!」
女の子達の情報網の広さには、いつも驚かされる。渋沢、か……人気者で、誰にでも優しくて、そのくせ特別扱いはできる奴だったな。
去年、俺と真奈瀬と渋沢は同じクラスだった。あいつは頻繁に、真奈瀬に“荷物を持とうか”だの“テスト勉強を一緒にしないか”だのと、声をかけていた。だから、俺も少し警戒していた所があった。
仕事の関係で、遅れて2限目から登校してきた俺。授業を受けている時も、友達と弁当を食べている時も、心は何処か別の所にあった。
「つーか美隼、ヤバいんじゃねぇの?」
「何が?」
「石川だよ。渋沢にコクられたっつって、その話題で持ちきりじゃん。」
「あー……でも多分、断ったんじゃないかな。あいつ、そういうの興味なさそうだし。」
「え、そうなの?僕、“考えさせてくれ”って返事したって聞いたけど。」
一人の友人の言葉に戦慄した。恐れていたことが、起きてしまうのだろうか。やっぱり真奈瀬は、バカみたいに優しいから、すぐに断るなんてしなかったのか。
気を持たせて傷付けることになるなら、さっさと断れよ。俺と一緒に居るの、楽しいって言ってたじゃねぇかよ。箸を握る手に、思わず力が入った。
好きな奴は居ない、とは言っていた。でも、あいつは、自分を好きになってくれる人の気持ちを無下にはできない性格だ。ということは、つまり、OKする可能性も否定はできないのだ。
「石川さんに告白したのって、渋沢君らしいよ。」
「えっ、陸上部の渋沢龍二!?アレじゃん、確かどっかの大学からスカウト来てるんでしょ?ヤバいね!」
女の子達の情報網の広さには、いつも驚かされる。渋沢、か……人気者で、誰にでも優しくて、そのくせ特別扱いはできる奴だったな。
去年、俺と真奈瀬と渋沢は同じクラスだった。あいつは頻繁に、真奈瀬に“荷物を持とうか”だの“テスト勉強を一緒にしないか”だのと、声をかけていた。だから、俺も少し警戒していた所があった。
仕事の関係で、遅れて2限目から登校してきた俺。授業を受けている時も、友達と弁当を食べている時も、心は何処か別の所にあった。
「つーか美隼、ヤバいんじゃねぇの?」
「何が?」
「石川だよ。渋沢にコクられたっつって、その話題で持ちきりじゃん。」
「あー……でも多分、断ったんじゃないかな。あいつ、そういうの興味なさそうだし。」
「え、そうなの?僕、“考えさせてくれ”って返事したって聞いたけど。」
一人の友人の言葉に戦慄した。恐れていたことが、起きてしまうのだろうか。やっぱり真奈瀬は、バカみたいに優しいから、すぐに断るなんてしなかったのか。
気を持たせて傷付けることになるなら、さっさと断れよ。俺と一緒に居るの、楽しいって言ってたじゃねぇかよ。箸を握る手に、思わず力が入った。