「……美隼君、今日はあんまり調子良くないのか?」

「何だか疲れてるみたいね……」



 カメラマンやスタイリストに心配されながらの仕事は、はっきり言って最悪だった。プライベートのことが影響するのはご法度なのがプロなのに、これじゃあダメじゃん。とにかく俺は、「すみません、大丈夫です」と虚勢を張りながら、いつもの自分を演じることに集中した。

 今日一日のスケジュールをやっとこなして、休憩所の長椅子にドカリと座り込む。大きな溜め息が、一つ。すると、不意に後ろから誰かの声がした。



「美隼君、大丈夫?」

「……あぁ、メリーちゃんか。うん、大丈夫。ごめん、足引っ張っちゃって。」

「そんなことないよ!誰にでもそういうことはあると思うし、あんまり気にしないでね。」



 静かに隣へ腰を下ろしたメリーちゃんは、「何か悩み事?」と微笑する。やっぱりそう見えるのか。プロ失格、かもしれない。



「あー……うん、ちょっとね。」

「何なに、恋の悩み?良かったら話聞くよ?知り合ったばかりでこんなこと言うのも変だけど……」



 でも、誰にも言わないでモヤモヤするよりは、誰かに話してスッキリした方が良い。そう言われて納得した俺は、彼女に打ち明けることにした。

 幼なじみに恋をしていること。鈍感なそいつにはどうやら好きな人が居ること。応援してやるべきなんだろうけど、難しいかもしれないってこと。一通り話した後で意見を求めたら、目の前の女の子は、何故だかプッと吹き出した。

 ――え、どういうことだよ。そんな笑える話じゃないだろ。