カタログとポスターの撮影準備のため、早速制服から衣装に着替えた。今回は相手役のモデルが居るから、女装はしなくて良いらしい。

 佐山さん曰く、“女装も確かに似合うけど、性別に合った格好をしている時が一番かっこいい”ってことで、密かに嬉しい。俺も佐山さんのブランドを着るなら、断然男物が良かったからね。



「美隼君。あたし、今日一緒に仕事させてもらう秋月メリーです。よろしくね!」



 色素の薄い目に、ライトアッシュの内巻きボブの女の子だった。フランス人とのハーフだとかで、かなりの色白。真奈瀬はもっと健康的な色なのにって考えて、ちょっと自己嫌悪。おい、仕事中だろ。仕事のことだけ考えろよ、俺。



「うん、よろしく。」



 上手く、笑えてたかな。そんなことを思ったのは一瞬で、すぐにポスター用の撮影が始まった。

 後ろから抱き締めるような格好で、レンガの壁にもたれる。すると、集中しようとする頭の中を、あの日の寂しそうな顔をした幼なじみがよぎった。

 ――ほんとは、こんなことしてる場合じゃないのかもしれない。でも、面と向かって謝る勇気はまだない。だからこうやって、真奈瀬のことばっかり考えてるんだよな。情けないよ、マジで。