香子にお礼を言うと、満足そうな笑みが返ってくる。「今度はお母さんとも買い物してみるね」というあたしの言葉には、更に大きな笑顔を見せてくれた。



「まぁ、メイクは今度教えてあげるとして……和屋君と良い感じになれたら良いね。」

「だ、だからタイプじゃないんだって!友達にしかなんないって絶対!!」

「分かんないよー?私だって、直哉は元々タイプじゃなかったからね。ていうか、佐桜花も和屋君のこと気に入るよ、きっと。恋か友情かを別にしても、人間的に好感持てる子だと思うから。」



 相方が言うからには、その通りなんだろうけど……“弟みたいにしか思えないんじゃないかなぁ”、と内心ボソリ。でも、仲の良い後輩が一人増えるんだと思えば良いか。別に男の子だって意識しなくても構わない筈だしね。クラスメイトの男子に接するみたいにしたら、無駄な緊張しないで済むかも。



「……うん、分かった。とりあえず、料理教えてもらってくる。」

「そうそう。別に必ずくっつかなきゃならない訳でもないし、“違うなぁ”って思ったら友達止まりもアリだと思うよ。あ、結果報告よろしくね。」

「あんたはワイドショー好きのおばちゃんか。」



 夕方の駅地下に、段々と人が増えてくる。帰宅ラッシュが始まらない内に帰ろうと乗った、準急の電車内。窓に映る自分の姿にはまだ慣れなくて、それを通り越した外の景色に視線を向けた。