隣を歩く親友は、次の英語の授業への心配をブツブツと語っている。きちんと予習をしないからだと軽く説教していると、何処からか「安海君、ちょっと」という声。見ると、同じクラスの和田小花(こはな)だった。
胸の辺りを覆うゆるやかな黒髪と柔らかな物言い、控えめの化粧にきちんと制服を着こなした姿は、誰かさんとは大違い。加えて彼女は、頭の良い文学少女だ。
「この前借りた本、凄く面白かった!ありがとね。今日返したくて持ってきたんだけど……」
「あぁ、良いよ。それにしても、和田が司馬遼太郎を読むなんて意外だよな。軽い感じの恋愛小説が好みかと思ってた。」
「え、それってケータイ小説とか?ダメダメ、私ああいうの苦手なのよ。友達に借りて何回か読んだけど、どうしても馴染めなくて。作家さん達には悪いんだけど、私には向いてないみたい。」
「へぇ、珍しいな。今時の女子高生って、ああいうのしか読まないんだと思ってたよ。」
隣で在も頷いている。すると、和田は小さく吹き出した。“みんながみんなそういう訳じゃない。自分はもっと違うものを求めているんだ”と口にした彼女は、一旦教室に戻り、本を片手に再びやってきた。
「はい、いつもありがとね。安海君とは本の趣味が合うみたいだし、また面白そうなのがあったら貸してね?」
「あぁ。」
在にもキラリとした笑顔を向けて、和田は一足先に自分の席へ着く。万が一付き合うのなら、ああいう落ち着いた会話が楽しめる子が良いな。間違っても、オレを四六時中追い回してきたり、馬鹿な発言をしたりしないような。
胸の辺りを覆うゆるやかな黒髪と柔らかな物言い、控えめの化粧にきちんと制服を着こなした姿は、誰かさんとは大違い。加えて彼女は、頭の良い文学少女だ。
「この前借りた本、凄く面白かった!ありがとね。今日返したくて持ってきたんだけど……」
「あぁ、良いよ。それにしても、和田が司馬遼太郎を読むなんて意外だよな。軽い感じの恋愛小説が好みかと思ってた。」
「え、それってケータイ小説とか?ダメダメ、私ああいうの苦手なのよ。友達に借りて何回か読んだけど、どうしても馴染めなくて。作家さん達には悪いんだけど、私には向いてないみたい。」
「へぇ、珍しいな。今時の女子高生って、ああいうのしか読まないんだと思ってたよ。」
隣で在も頷いている。すると、和田は小さく吹き出した。“みんながみんなそういう訳じゃない。自分はもっと違うものを求めているんだ”と口にした彼女は、一旦教室に戻り、本を片手に再びやってきた。
「はい、いつもありがとね。安海君とは本の趣味が合うみたいだし、また面白そうなのがあったら貸してね?」
「あぁ。」
在にもキラリとした笑顔を向けて、和田は一足先に自分の席へ着く。万が一付き合うのなら、ああいう落ち着いた会話が楽しめる子が良いな。間違っても、オレを四六時中追い回してきたり、馬鹿な発言をしたりしないような。