「……オレ達もだけど、向こうも相当疲れてるだろうし、集中力を欠いてる筈だ。油断するなよ。」



 なかなか決着が付かないせいで体力を大幅に消耗したらしい女子と、苛々している男子。そんな奴らを諭すように声をかけてやると、四つの頭が縦に動いた。

 言葉はなくとも、伝わってくる。“絶対に勝利は譲らない”という、その思いが。そんな時、先生からある提案が出される。



「おーいお前ら!このままじゃあ時間オーバーして次の授業に影響するから、次に点を入れた方が優勝ってことでどうだ?」



 オレ達選手が一様に頷く。先生が応えるように手を挙げれば、試合が再開された。運命を決める、ラスト・モーメントの幕開けだ。

 浜野が絶妙なタイミングで相手から奪った球が浅井に渡り、山田にパスされる。それが日吉に回ってくると、奴は最後の希望をオレに託した。



「頼む!安海!!」

「安海君頑張って!」

「シュートシュート!!」

「絶対入れろよ!」



 仲間達の声がオレを後押しする。それに突き動かされるように、シュートを放った。

 ――大丈夫だ。プレッシャーはいつだってチャンスに変えてきた。そう考えながらも、祈るような気持ちを胸に、ボールの行く末を見守る。

 茶色い塊が、リングに当たって真上に跳ねた。頼む、入ってくれ……呟きそうになるオレに微笑むかのように、その塊は、爽快な音を立ててネットを通過していった。

 試合、終了。勝者はオレ達となった。