――そうなの、かな。だとしたら、あたしって凄く恵まれてる。何だかんだで、応援してくれてる後輩も沢山居るし。

 自分が投げる一球一球に喜んだり憂いを感じたりしてくれる人達のために青春を捧げるのも、悪くないと思う。でも……あたしだって、同級生の女の子達みたいに彼氏と手を繋いで歩いてみたい。きっと、まだまだ先のことなんだろうけどね。



「佐桜花……あんたって、ソフトに関しての洞察力はあるのに、人間に関してはとことんダメだよね。」

「え、ちょっと傷付くんだけど……」



 それってつまり、あたしが思いやりがなくて空気も読めない人ってことでしょ。最低人間じゃん、あたし。頭の上に、たらいが落ちてきたような気分になった。



「……そうあからさまにショック受けられても困るんだけどね。佐桜花のためを思って言わせてもらうわ。
聞こえる言葉が全てじゃないよ。ちゃんと言葉にはしてないけど、あんたを好きだって言ってる人は居るの。気付いてあげなきゃ。」



 “聞こえる言葉が全てじゃない。”その意味にあたしが気付くのは、もう少し先のことだった。