真境名さんがフッと男子達に目をやると、奴らはサッと視線を逸らした。学園のマドンナ的存在の彼女に相手にされる訳がない、と思っている男子ばかりなんだろう。“会長の隣が似合う奴なんて、イケメンな秀才君くらいだろ。”そんな呟きを何度も耳にしてきたから、よく不憫な気持ちになったんだよね。

 報われないだなんて決めつけるの、あたしは良くないと思うんだけどな。努力して振り向いてもらえる可能性を否定して欲しくない。相手が勝利の女神でも、意中の人でも。



「山沖さん、大切なお昼休みにごめんなさいね。また来るわ。」



 華やかな笑みを残し、あたしに手を振って教室を後にする真境名さん。その笑顔の残像に酔いしれている男子達と、憧れの眼差しで去り行く背中を見つめる女子達。やっぱり、彼女は凄い。カリスマって、こういう人のことを言うんだろうな。



「……会長って謎だよね。」

「どーしたの、香子。真境名さんはミステリアスな所が人気なんじゃん。」

「そうじゃなくて。滅多に笑わないのに、あんたの前ではよく笑うよねってこと。みんなはあの人をカリスマって言うけど、あの人にとってのカリスマはあんたなんじゃない?佐桜花。」