「ねぇねぇ健ちゃん、ウチと付き合ってよ!ウチ、健ちゃんに一目惚れした!!」

「……やめてくれよ。オレは誰とも付き合う気はない。」

「えー!?健ちゃん意味不明!!今時そんな人いないよー!?」



 今時そんな金髪のコテコテギャルメイクしてるのもお前くらいだよ。大体、お前みたいなのは趣味じゃないんだよ。胸の奥で呟いて、女をジロリと見やる。威嚇したつもりだったのに、この女は「かっこいい!もっとにらんでー!!」などと叫んでいる。お前はドMか、ともう一度心で悪態をついた。

 早く教室に帰ろうと促す友人に見向きもしないこの金髪ギャルを見ていると、段々苛ついてきた。さっさと帰れよ。爆発しそうになる怒りを抑え、オレは井上とかいうその女に一応の笑顔を向けてやる。



「……井上、だっけ?悪いけど、何を言われても付き合わないから。恋をしたいなら、他を当たってくれない?」



 オレの言葉で明らかに意気消沈した井上だったが、何を思ったか、真夏の太陽みたいな眩しい笑顔を向けてきた。白い肌に似合わない濃いメイクのせいで若干怖いのだが、笑顔自体はとても綺麗だ。

 ――思わず、動揺した。