――教室に入ると、廊下側の窓際にある自分の席へ腰を下ろす。在はオレの前の席の奴に、「ちょっと席借りるね！」と声をかけた。

　他の生徒達もゾロゾロと帰ってくる中、教室の片隅には何やら噂話をしているクラスメイトの女子達。オレのことをまた好き勝手に言っているのだろう。“サイテー”とでも言いたげな刺すような視線が、何よりの証拠だ。



「……健、あんま気にすんなよ。」

「あぁ。ありがとう。」



　女子達を可愛らしい目で睨み付ける在に「やめとけ」と釘を刺した、その時だった。突然の奇声が、オレ達の耳を貫いたのは。



「キャーッ!!みっちゃん、この人誰!?超イケメンじゃんっ!!」

「琥珀(こはく)、落ち着きなって！安海君がかっこいいのはよく分かるけど、こんな所で騒いだら迷惑だから!!」



　廊下からこちらへ身を乗り出すようにして叫んだのは、見たことのない金髪の女。何なんだ、こいつは。ウチの学校は金髪厳禁じゃなかったか。そう思っていると、見慣れない女子がオレに顔を近付けてくる。濃いメイクに一瞬怯んだことは、自分だけの秘密だ。